
森邸
Description of the work
竹垣施工
素材に向き合い、一本ずつ組み上げる──庭を包む「用と美」のかたち
森邸では、通り沿いの長い境界を覆う竹垣のご依頼をいただきました。
節の位置や反り具合を吟味しながら、しゅろ縄で丁寧に結び合わせていきます。現場に立てる前に、工房での下拵えをしっかりと行うことで、美しさと耐久性を両立させました。
施工は数日にわたり、地中の基礎づくりから垂直と水平の調整、立子の組み上げに至るまで、まるで茶室を建てるような心持ちで臨みました。仕上がりは、青竹の瑞々しさが空間に新しい息吹を与え、もともとの庭の景観とも調和のとれた姿に。
表通りに面しながらも、圧迫感はなく、内と外をやさしく分ける「境界としての美」を体現した意匠。季節が巡るごとに色合いが変化し、やがて景色の一部として静かに馴染んでいく、そんな未来を思い描きながら手を入れました。
素材の命に触れ、それを住まいの一部へと昇華させる。森邸の竹垣施工は、私たちにとっても原点を思い出させてくれる大切な仕事となりました。