
M邸
Description of the work
枝垣──編まれた時間、美の境界線。
庭と外界のあいだに、ひと筋の境界を引く。
それは決して遮るためではなく、やわらかく包み込むための線──
この「枝垣」は、そんなやさしさと緊張感が同居する、繊細な竹垣のひとつです。
一本一本の細枝が、寸分の狂いもなく揃えられ、
横へ、そして奥へと丁寧に編み込まれたその姿は、ただの装飾にとどまりません。
支柱となる柱と押縁には、時を経ても風格を保つ太めの木材を用い、そこに結ばれる結束もまた、風雨に耐えるための工夫が随所に施されています。
全体の構成は緻密でありながらも、自然素材ならではのゆらぎが、どこかほっとするような温もりを添えています。
見る角度によって、空気を編むように透けて見えるこの竹垣は、日中には葉擦れの音とともに、夜には灯りに浮かび上がる陰影とともに、
暮らしの背景に詩を添えてくれる存在です。
枝垣は、ただ美しくあればいいわけではない。
“美しく保つことができる構造”でなければ、時間に耐えられない。
その難しさを超えて生まれたこの枝垣には、
竹之助の信念と技、そのすべてが静かに宿っています。