
T邸
Description of the work
建仁寺垣──静けさを纏う、庭の結界。
まばゆい陽の光を受けながらも、どこか涼やかな気配をまとった垣根。
これは「建仁寺垣(けんにんじがき)」と呼ばれる、日本庭園の代表的な意匠です。
名前の由来は、京都・建仁寺の境内に用いられたことから。
寺院の静寂と、禅の心を写すようなこの竹垣は、格式と優しさをあわせ持つ“庭の結界”として、古くから愛されてきました。
今回、竹垣職人・片岡大輔の手により設えられたこの建仁寺垣は、伝統に忠実でありながらも、現代の住宅と美しく調和するように設計されています。
均等に並んだ縦竹が、まるで一本の屏風のように庭を囲み、
水平に走る押縁(おしぶち)が、全体にリズムと安定感をもたらします。
さらに、黒い結び紐が随所に効かされ、淡い黄色の竹と見事なコントラストを描きながら、手仕事の温かみを静かに主張しています。
その姿はまるで、庭を守りながらも語らず、
ただ風の音や木々の影を受けとめる“無言の詩”。
暮らしの背景にそっと寄り添い、季節ごとの光や緑とともに表情を変えてゆく──
この建仁寺垣もまた、時を重ねることで、いっそう深く美しくなっていくことでしょう。