
Y邸
Description of the work
空間に格を添える名脇役
柔らかな曲線を描くこの駒寄(犬矢来)は、伝統的な防護の役割を果たしながらも、玄関まわりの空間美を引き立てる設えとして機能します。竹の一本一本を丁寧に組み合わせ、表面には微妙な凹凸の陰影が現れ、光を受ける角度によって表情を変える仕上がりに。静かに、しかし確かに、家の格式と品格を語りかけてきます。
こちらのY邸では、立派な木製の引き戸と敷石の意匠に寄り添うように、二台の駒寄を設置しました。両脇に控えるその佇まいは、まるで家そのものの「門番」のような存在感。単なる装飾にとどまらず、泥はねや衝突から建物を守る本来の機能と、現代的な住まいにも違和感なく馴染む造形を兼ね備えています。
秋色に染まりゆく紅葉が彩りを添え、静かな和の情景を完成させます。四季折々の表情と調和し、歳月を重ねるごとに味わいを増す――そんな美しい変化も、天然素材ならではの愉しみです。格式ある玄関の設えとして、また季節を迎える器として、この駒寄は空間に格を添える名脇役となっています。