
竹灯り
Description of the work
竹のひかり、ひとときの幻想。
闇に包まれた寺院に、ふわりと浮かび上がる竹の影。
それはまるで、時が静かにたゆたう夢の中の光景。
このプロジェクトは、竹垣職人・片岡大輔が手がけた、竹のシェードによる幻想的なインスタレーション。歴史ある寺院の境内に、複数の竹の装置を配置することで、灯りと影、風と音が織りなす特別な空間を創り出しました。
使用されたのは、職人の手で丁寧に割られ、磨かれた真竹。
その自然な丸みと節のリズムが、灯籠のように柔らかな光を反射し、あたり一面を幽玄な世界へと導いていきます。
ただ美しいだけではない。
そこに立ち止まり、耳をすませば、竹の隙間をすり抜ける風の音や、夜の匂いまでもが心に沁みてくるよう。
日常の喧騒から一歩離れたこの場所は、訪れる人の時間感覚をふわりとほどき、心を澄ませる小さな非日常となりました。
光は、ただ照らすためだけにあるのではない。
竹が描く影の濃淡にこそ、私たちは“余白”の美しさを見出すのです。
この夜、この瞬間だけに現れた、竹と光の小宇宙。
それは、いつまでも心に残る静かな感動を宿してくれました。