
N邸
Description of the work
竹が守り、竹が魅せる
町家の佇まいを静かに引き立てるこの竹の構造物は、駒寄(こまよせ)、あるいは犬矢来(いぬやらい)とも呼ばれます。
外壁の保護として設置されたこの造形も、竹之助の手にかかれば、暮らしに溶け込む“風景のひとつ”となります。
曲線の設計に宿る美と技
大きく弧を描くように湾曲させた駒寄のフォルムは、機能性と意匠性の絶妙なバランスのうえに成立しています。
一本一本の細竹は天然素材ゆえに微妙な個性があり、それらを揃え、しなやかに整えるには高度な技術と忍耐を要します。
職人の手によって熱と水分を加えられた竹が、静かに曲がり、規則正しく並ぶことで、建物の足元に心地よいリズムを生み出します。
“結界”としてのやさしさ
駒寄は境界を明示するものですが、それは決して排除や拒絶ではなく、「ここからは丁寧に守りたい空間です」という静かな意思表示。
その佇まいには、日本建築の美意識が息づいています。
通りすがりの誰かの視線を受け、そっと微笑むように寄り添う──そんな“やさしい結界”として、この作品は存在しています。