
竹あかり 街なか
Description of the work
竹あかり ── 光がほどく、街と人のあいだ。
日が暮れたあと、街の輪郭がやさしく浮かび上がる。
灯されたのは、電飾ではない。炎でもない。
それは、一本一本の竹に息を吹き込んで生まれた、静かで温かな“あかり”です。
竹之助が手がけたこの竹灯りのインスタレーションは、
歴史ある建物や石畳の道、川沿いの遊歩道といった町の風景に溶け込みながら、
人々の足を止め、会話を生み、心にそっと火を灯す夜の装置となりました。
器として用いられた竹は、自然のままに割り、削り、磨かれ、
内側から優しく光を放つように設計されたもの。
円筒の中に浮かぶカラフルな球体、繊細な紋様をくり抜いた影絵、
水と光が共演するアクアリウムのような作品まで──
そのすべてに、職人の遊び心と技術、そして“光を演出する素材としての竹”の可能性が宿っています。
特別なことをしなくても、ただ歩いているだけで、いつもの町が少しだけ違って見える。
そんな「記憶に残る一夜」をつくり出すのが、竹あかりの持つ力です。
今回の展示では、たくさんの方にご来場いただきました。
浴衣姿で笑う人々、写真を撮る家族、静かに立ち止まるひとりの人──
そのすべての表情が、この光のなかに溶けていきました。
竹は、ただの素材ではありません。
人と人、風景と記憶、時代と感性を結び直す「橋」のような存在。
竹之助はこれからも、この竹と灯りの力で、街に、小さな驚きとやさしさを灯し続けていきます。